定量的な視点とは
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二つ以上のものを比べる
この世に絶対は存在しない。確率的に最も確からしいことしかこの世には存在しないのだ。
上の二台の車を比べてみよう。この二台の車の違いを説明せよ。という問いがあるとき、あなたならなんと答えるだろうか。
考察の仕方
考察には2種類の方法がある。それは定性的な考察と定量的な考察だ。これから2種類の方法で上の2台の車の違いについて考察してみる。
定性的な考察
左の車は黒くみえて、右の車は青く見える。車の高さはほとんど同じで、車の車種が同じようなので、2台の車の違いは色だけである。
定量的な考察
左の車をA、右の車をBとする。まず、A、Bの車を定規で車の長さを測ってみた。
A [cm] | B [cm] | |
1回目 | 7.22 | 7.23 |
2回目 | 7.20 | 7.20 |
3回目 | 7.21 | 7.22 |
4回目 | 7.22 | 7.22 |
5回目 | 7.21 | 7.20 |
平均 | 7.212 | 7.214 |
標準誤差 | 0.008 | 0.012 |
以上のように測定することができた。
つまり、Aの長さは、7.21±0.01 cm
Bの長さは、7.21±0.01 cmである。
誤差の3σ以内に二つの最確値が含まれるので、A、Bの車の長さは同じであることに優位性が見られた。
色については、RGB値を取得した。
A | B | |||||
Red | Green | Blue | Red | Green | Blue | |
1回目 | 0 | 132 | 210 | 40 | 40 | 40 |
2回目 | 0 | 128 | 208 | 41 | 41 | 41 |
3回目 | 0 | 130 | 209 | 40 | 40 | 40 |
最確値 | 0 | 130 | 209 | 40.3 | 40.3 | 40.3 |
測定誤差 | 0 | 2 | 1 | 0.6 | 0.6 | 0.6 |
以上のように測定することが出来た。
以上のことから、A、BのRGB値が得られた。誤差の3σ以内に二つの最確値が含まれないことから、A、B車の色が違うということに優位性が見られた。
定量的な考察をするために
二つのものを比較する際、感覚的に評価を下すことは非常に容易である。しかし、それは、その人にとっての評価でありどこにも妥当性や優位性は見られない。レポートや発表をする際に、定性的な評価は全く必要ではなく、むしろ無駄である。
定量的に評価をするには、数値を扱い、統計的な側面からその妥当性や優位性を考察する必要がある。
正規分布(ガウス分布)から優位性を評価する
正規分布(ガウス分布)で考察する手法が定量的評価のはじめだと私は思う。
では、正規分布とは何か。定量的な評価ができるようになるよう、初歩的なところにも目をつけて解説していく。
最確値と誤差
一回の測定では、そのものの本当の大きさを測ったとは言い切れない。そのため、3回~10回、新たな物理を発見するときなどは、100万を超える施行回数で測定を行う。そうすると、統計的な値というものが見えてくる。
例えば、あるものの長さを100万回測定したとしよう。その結果、その測定の平均値は必ずといっていいほど、あるものの長さであると言えるだろう。これを最確値といい、かみ砕いて言えば、最も確からしい値である。
この時、当然誤差が生じる。100万回測定したのだから、測定結果にすこしのばらつきがあるのは必然といえるだろう。それを誤差という。この誤差には測定誤差と確立誤差があり、今回の例でいえば、100万回測定に対しての誤差なので、測定誤差となる。
この誤差のことをσと物理ではよく言い、用いられる。
これらの最確値、誤差を用いて正規分布をみてみよう。
上の正規分布をみると、1σは68%の確率で起こりうるといっている。つまり、今回の100万回測定において、68%の確率で測定にふらつきがあるといっているのだ。ふらつきの確率をなるべく100%に近い3σで評価すれば、測定に対してのふらつきが分かる。3σとは誤差の値を3倍した値のことだ。
初めの車の測定の話に戻って正規分布(ガウス分布)を書きながら、その優位性を見てみよう。
今回の測定では、Aの3σ以内にBの最確値が含まれている。また、同様に、Bの3σ以内にAの最確値が含まれている。
このことから、A、Bの二台の車の長さは同じであるという優位性が得られた。
色についても同じように考察すればよく、RGB値の測定から、
AのR値の3σ以内にBのR値の最確値と3σ以内の値が含まれない。その他の色についても同様であり、二台の車の色は違っているという優位性が得られた。
実験における考察
実験においてほとんどの場合、公値が存在する。そのため、測定結果の最確値から3σ以内に公値が含まれれば、その測定はその公値を測定する実験として妥当であるといえる。
終わりに
おそらくこれを読んでいる人は、物理学実験を受講しているものが多いだろう。大変なことは多いかもしれないが、逆に学ぶこともそれ以上にある。つらい後期を乗り越え、理科を指導するものとして理科好きの子どもを育ててほしいものである。